ライトニングトーク、通称「LT」。伝えたいことを約5分という短い時間に集約する力が求められるプレゼンテーション手法です。この手法を用いた社内勉強会を開催しているIT企業はたくさんあるので、一度くらいはこのプレゼンをしたことがある方もいらっしゃると思います。
ただもし、入社・転職してすぐの会社でLTをしてほしいと言われたら?「ネタはどうする?」「会社の雰囲気も掴めてないぞ…」「せめて何度か様子見したい…」。そんな声も聞こえてきそうです。
ところが2020年9月25日(金)に開催されたSO TechnologiesのLT会では、プレゼンをした4人中3人が入社3ヶ月以内のメンバーだったのです。全員がぜひ話させて欲しいと名乗り出た社内勉強会のイベントレポートをお届けします。
SO TechnologiesのLT会(社内勉強会)の目的は、「エンジニア同士の交流」「発表することに慣れる」「誰もがアウトプットする文化を作る」と大きく分けて3つあります。おそらく、何か“もの足りなさ”を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はSO TechnologiesのLT会は、「技術力の底上げ」を主の目的に置いていません。もちろん技術力向上をないがしろにしているわけではありません。ただ、様々なバックグラウンドを持つメンバーがすぐにでも会社でのびのびと自分の力を発揮できるようにするためには、横のつながり・コミュニケーションがとても大切だと考えているので、この3つを主軸にLT会をしています。
また誰もが気軽に自分の考えをアウトプットできるようになれば、意見交換が普段の業務でも積極的になされ、結果それが技術力の向上につながると考えています。そのためプレゼンテーマは「なんでもOK」。技術のことはもちろん、中には自己紹介がてらプライベートなことをテーマにするメンバーもいるので、LT会中は終始、和やかな時間が流れます。
そんな和やかなSO TechnologiesのLT会は、毎月最終金曜日の17時からの定例イベントとなりました。参加は任意。業務を最優先に、参加できるメンバーがリモートで参加するスタイルをとっています。
今回のLT会の発表者は、SO Technologiesの各サービスを支えるエンジニア4人。
トップバッターは、2016年にソウルドアウト株式会社IT推進部にキャリア入社後、現在はSO TechnologiesのライクルLINEチームで開発から技術マネジメントまでを担っている、羽田陽太さん。彼のLTテーマは『カオスなフロントエンドと戦うために』です。
仮想DOMが備わったフレームワークを使った開発の際に、現状の自身の設計思想が十分でなかったことを感じていたという羽田さん。そんな状態のまま新規開発を優先して進めてしまった結果、自身が携わるライクル Lのフロントエンドのコードが複雑に肥大化していることに悩んでいたそうです。そこで今回「大規模なフロントエンドに耐えうる様な設計思想に則ったリファクタリング」を改めて考え、その案を見てもらい意見を集いました。
「アクティブユーザーが1人」というなかなかにハードな現状も含め、自身が携わる開発の課題点や悩みをありありとさらけ出した羽田さん。そんな彼の率直な悩みに対して、新しいリファクタに対する疑問や、「こうしたほうがいいのではないか」というアイデアが、参加メンバーから寄せられました。
こんな技術の相談がチームを越えて気軽にできるのも、SO TechnologiesのLT会ならではの光景です。
次は、2020年の7月にATOM NEOチームにジョインした下江衛さん。彼は自身が取得した資格『Certified ScrumMaster』をテーマにプレゼンをしました。
IT業界にいる人なら、一度くらいは耳にしたことがあるであろうこの資格。ただ具体的な中身はあまり知られていないのではないでしょうか。
そこで下江さんは、実際に受講した3日間の研修での学びを通して、この資格を持っている人が具体的にどういう能力を認められたのかについて解説してくれました。
例えば「フィードバック」の講義。開発に携わる人間であれば、フィードバックをする側にもされる側にもなります。それぞれの立場からのどんなフィードバックが適切か、いい例・悪い例をもとに紹介。そこから「“フィードバック対象”と”人” は切り離して考えるべし」という導きが得られたそうです。
スクラムマスターとしてステップアップを志す人たちの受講が多い、この資格。しかし話を聞いていると、エンジニアとして初心に帰れるような内容も含まれているように感じました。
どんなフィードバックやアイデアがよりよい開発を育むのか、考えるいい時間になったと思います。
3人目は、ライクルGMBチームの松本翔さん。彼もまた2020年9月に入社したばかりのメンバーです。LTテーマは『ISUCONのすすめ』。
なんでも彼は、今年で開催10回目となる、お題のWebアプリケーションを⾼速化するコンテスト「Iikanjini Speed Up Contest」に4年連続で出場しているのだそう。
ISUCONを通して、新しいツールやクラウドに触れ、高速化のノウハウを実践的に身につけられたという松本さん。またコーダーとしてはもちろん、チームの司令塔、運営からの情報を拾う情報屋など、自分が活躍できる場を再発見できるのも、このコンテストの魅力なのだそう。
ISUCONに4年連続出場しているだけあって、松本さんのプレゼンからはコンテストの楽しさが伝わってきます。
仕事に活かせるからという動機ではなく、純粋にその機会を楽しむ。オープンなコンテストに参加する松本さんの姿を通して、楽しさの延長線上にこそ仕事に活かせる学びがあると教えてもらったように思います。
そして今回のLT会ラストを締めくくるのは、電子国家として有名なエストニアでのエンジニア経験を活かし、2020年8月にSO Technologiesへジョインした島田文平さん。そんな彼のLTテーマは『テスティングルールをチームにスムーズに導入する方法』です。
プロダクトの品質を保つために必要不可欠なテストコーディング。当時島田さんが在籍していたチームでは、リリースを直前に控え、今後も一定の品質を保ち続けるために、より厳格なテストコーディングのルールを決める必要がありました。
メンバーはいろんな国に住んでいるためリモートでのやりとりも多く、さらには業務の経験年数にもばらつきがあったため、いつでもどこでも誰もが参照できるテスティングルールの策定が喫緊の課題でした。
そこで島田さんが取り組んだのが、テスティングルールのドキュメント化です。まずはプロダクト開発で最低限必要な各テストの定義、お手本のテストコードを解説する図解やテキストを用意。そしてそのルールで運用がきちんとできるのかを試す期間を設けたそうです。
エンジニアでドキュメントを作成するのが苦手という人もいると思います。しかしリモートワークの推奨で社員の教育がより難しくなった今こそ、困った時に気軽に参照できるルールやチェック項目の策定が大事だと、島田さんのプレゼンを通して改めて気づかされました。
エンジニアの社内勉強会というと、「何かためになる」ものを用意したり求められたりする傾向があると思います。
もちろん勉強会ですから「ためになる」ことは、参加する意義と直結するでしょう。
ただそうなると、メンバーに勉強会のための準備の負担がかかってしまったり、参加に対する意欲ではなく義務感が生まれてしまったりして、主体的積極的な学び合いの場ではなくなってしまうのではないでしょうか。
SO TechnologiesのLT会では、いちメンバーの経験が別のメンバーの「こうしてみたら」というアイデアや、「やってみたい」という好奇心につながって、それが結果「ためになっている」のだと思います。
開発でちょっと行き詰まっている人に。
入社したばかりで、コミュニケーションに不安を覚えている人に。
アイデアがあふれて止まらない人に。
こんなメンバーの誰にでも開かれたアウトプットチャンスに、社内のコミュニケーションからよりよい開発を生み出していくヒントがつまっていると、SO Technologiesは思っています。