SOT STYLES
SPECIAL INTERVIEW 18
ATOM事業責任者・吉村が語る(前編)ー技術負債と組織崩壊をどう乗り越えたかー

技術的負債が積み重なり、開発組織も揺らいでいたATOM。
その再建の中心にいたのが、事業責任者の吉村さんです。

短期の要望に応え続けるだけでは、プロダクトも組織も持続しない。
そうした危機感のもと、開発思想を見直し、営業と開発の関係性を組み替えながら、事業を「守り」から「攻め」へと進めてきました。

今回は、ATOMが“死の淵”とも言える状態からどのように立ち直ったのか、そしてその先にどんな未来を見据えているのかを伺いました。

低迷期:なぜ「組織崩壊」と「技術負債」は起きたのか

─ 吉村さんが入社した当時、組織にはどのような課題があったのでしょうか?

私が入社した当時は、前任の代表や開発責任者の交代直後で、エンジニアもほとんど残っていない状態でした。組織としても、プロダクトとしても、大きな転換点にあった時期です。

システムは長年の積み重ねによって複雑化しており、ゼロイチで作られたコードが十分にリファクタリングされないまま拡張されてきた背景がありました。依存度の高い巨大なクラスや、いわゆるスパゲティコードも多く、どこに影響が出るのかを把握すること自体が難しい状態でした。

また、SaaSでありながら、営業主導で短期的な要望に応える開発が中心になっていた側面もありました。顧客の要望をそのまま実装する、短期収益を優先する、個社最適の開発を行う。

そうした積み重ねが、結果として技術的負債を増やしてしまっていたのだと思います。

その影響で、UXは徐々に低下し、改修の影響範囲は読みづらくなり、メンテナンスコストとリスクは肥大化していました。開発が前に進みにくい、非常に厳しい状態だったと思います。

葛藤と決断:エンジニア出身だからこその「痛み」と失敗

─ 現場の苦しみを知る吉村さんにとって、非常に苦しい舵取りだったのではないですか。

はい。
事業を成長させるために「新しい機能をどんどん出してほしい」という声がある一方で、現場からは「今の状態では持続的な開発ができない」という声が上がっていました。

ビジネスサイドには明確なニーズがあり、「なぜ応えられないのか」というもどかしさがある。
開発サイドには、「この状態では作りたくても作れない」という現実がある。

その間に立ちながら、双方の正しさが分かるからこそ、非常に葛藤がありました。結果として、組織の中に少しずつ歪みが生まれていた時期だったと思います。

解決策:どのようにして「死の淵」から脱したか

─ どうやって、その状況を立て直したのでしょうか?

まず、「このままでは持続的な成長はできない」という共通認識をつくり、リプレイスという大きな決断をしました。

ただ、そこからも簡単ではありませんでした。当時はエンジニア組織の再構築が進められており、旧システムのドメイン知識を持つメンバーがほとんどいない状態でした。その結果、旧コードを参照しながらの再実装になりかねず、同じ負債を繰り返すリスクもありました。

さらに、機能全体を一気に置き換えようとしたことで、スケジュールにも無理が生じました。理想と現実のギャップに直面し、何度も立ち止まりました。

そこで私たちは、「二度と同じ負債を生まないための開発思想」を明文化し、エンジニアだけでなくビジネスサイドにも丁寧に説明しました。

現在の主な開発方針は、次の通りです。

  • 個社最適ではなく、多くの顧客に価値が届く設計を行う
  • 顧客要望をそのまま実装せず、課題起点で設計する
  • 技術的負債は前提として受け入れ、定期的に返済する
  • 使われない機能は価値がないと捉える
  • 機能は常にシンプルに、最小構成から始める
  • 利用が拡大しても構造的に無理が生じない設計にする
  • 開発は「作って終わり」ではなく、学習まで含める

特に意識したのは、「開発はコストではなく、未来への投資である」という認識を組織全体で共有することでした。そして変化に対応し続けるためには持続可能な構造が必要であることを、繰り返し伝えました。

また、顧客の要望はあくまで表層に現れているものです。その裏にある本質的な課題を深掘りし、それをプロダクトという形で解決する。それがSaaSの役割だと考えています。

現在と未来:エンジニアが「誇り」を持てる組織へ

─ 今の組織の状態はいかがですか?

開発思想を明確にし、組織全体で共有したことで、設計の質とスピードは大きく改善しました。

今では、エンジニアがPMと議論しながら主体的に意思決定し、自走して開発を進められる状態になっています。
「作らされる」のではなく、「自ら価値を設計する」組織へと変わってきました。

そして大きな変化の一つが、営業組織と開発組織の関係性です。

以前は、顧客接点を担う営業組織と、プロダクトを担う開発組織とで、役割が分かれている状態がありました。それぞれが最善を尽くしていても、組織それぞれがもつ役割や考え方が揃っていなければ、事業としての最適にはなりません。

今は、「なぜその要望が出ているのか」「本当に解くべき課題は何か」を、組織を越えて同じ前提で議論できるようになっています。

ビジネスサイドはプロダクトの思想や制約を理解した上で顧客と向き合い、開発組織も顧客の事業背景や現場のリアルを踏まえて設計を考える。

まだ完成形ではありませんが、部門ごとの最適ではなく、事業全体としての最適を考えられる組織へと確実に進化しています。

製販一体とは、それぞれの立場を越えて、顧客価値と持続性の両方を見ながら意思決定できることだと思っています。
その土台は、今しっかりと築けています。

─ 最後に、今、壁に直面しているエンジニアやリーダーへメッセージをお願いします。

技術的負債や組織の歪みに直面すると、「自分たちの努力ではどうにもならない」と感じる瞬間があると思います。私自身も、何度もそう感じました。

でも、構造は変えられます。
思想を言語化し、対話を重ね、覚悟を持って意思決定をすれば、組織は必ず変わります。

大切なのは、「今を回すこと」だけでなく、「未来をつくる視点」を持ち続けることだと思っています。

短期の成果と、長期の持続性。
両方を見ながら意思決定するのは簡単ではありませんが、それを諦めないことが、結果としてチームの誇りやプロダクトの強さにつながります。

もし今、壁の前に立っているなら、それは組織が次のフェーズに進もうとしているサインかもしれません。
逃げずに向き合い、構造から変える。その経験は、必ずあなた自身の力になります。

今後もそうした挑戦を重ねながら、誇りを持てるプロダクトをつくっていきたいと私は思っています。

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